Elzhi - Elmatic


Slum VillageのElzhiがフリーのミックステープとして発表した「Elmatic」。言うまでもなくNasIllmatic」のトリビュート盤なんだが、これがただビートに乗っけてフリースタイルしているなんて甘っちょろいものではなく、驚きの傑作だった。まずトラックは全てデトロイトのファンクバンドWill Sessionsが担当。つまり「Illmatic」のトラックをバンドの生演奏で再現しているのだ。結果、ビートは生でもタイトでソリッドなまま、サンプリングネタのフレーズはより音楽的に昇華されている素晴らしい仕上がり。「One Love」や「The World Is Yours」なんかは曲の後半でおなじみのリフにインプロ的アレンジまで施されていて、「Life's A Bitch」ではネタ元のThe Gap Band 「Yearning For Your Love」のコーラスまでヴォーカリストをフィーチャーして再現し、「It Ain't Hard To Tell」はベースじゃなくてビートの方を強調してみたり、といった具合。そして独自な解釈という点はラップにも表れており、Elzhiは原曲のテーマや世界観にそって自らの生き様や過去を反映した自分の詩を綴っている。例えばオリジナルの「One Love」は獄中の友人へ宛てた手紙という設定だが、「Elmatic」では女性へのラブソングになってて、詩に「Eメール」って言葉が出てくるあたりニヤリとさせられるね。それでラップの声質やスタイルはややNasを意識してるような、ってかこんなにNasっぽかったっけ、と思わせるのも驚きだ。ジャズやクラシックにおいてマスターピースを色んな演者が再演するような感覚で「Illmatic」に挑んでいると言っていい作品だろう。それでここまでの結果を出してたのは大したもんだ。好きになるというか「愛着がわく」アルバムだ。



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Fashawn - Ode To Illmatic (2010)


「Elmatic」を企画したXXLマガジンは昨年似たような企画をFashawnをフィーチャーしてやっとります。こっちはDJ Green Lanternプロデュースでより「ミックステープ」なノリに近いが中々良いよ。

AZ役はTalib Kewli!。ちなみに「Elmatic」ではRoyce!。


Nas - Illmatic (1993)


語ることは山ほどあるし、何も言わなくてもいいかもしれない。ライフ・イズ・スティル・ビッチだが、これはスティル・グッド、いやグレート!。