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Superstar Quamallah - Invisible Man

ブルックリンのSuperstar Quamallahは実際に高校で教段に立ち、大学でも講義をしているというラッパー先生。その2ndのタイトル元は50年代に刊行されたラルフ・エリソンの名著「見えない人間」。白人社会で「見えない存在」とされる黒人青年がアイデンティティを確立するという話だそうで、Quamallah先生は80年代後半から90年代初めごろのヒップホップに影響を受けた自身になぞらえ、ジャズ&ソウルなタイトビートに乗ってソフトな語り口で表現するという趣向。「88 Souls」「1993 Shit」なんてピンポイントで年代を語る曲もあるほどだが、単なるノスタルジーだけではないのは言うまでも無いでしょう。インテリジェンスと「粋」に溢れた逸品。ヒップホップに愛と造詣が深いほど楽しめるハズ。




〜合わせて聴きたい盤〜


Superstar Quamallah - Godfood: The Break-Fast (2005)


Quamallah先生の前作はラップ入りが数曲で短いブレイク曲がたくさん入ってる不思議なバランス。



Boogie Down Productions - Sex And Violence (1992)

「Invisible Man」にはいくつかの意味を含ませているQuamallah先生。「見えない存在」とは「神の力」のことでもあり、それはすなわち人間1人1人のことである、とのこと。これはヒップホップ界の元祖「ティーチャー」KRS-One先生がBDPの最後のアルバムの最後の曲「The Real Holy Place」で言っていた「真の聖域とは精神である」という意見に重なるものだな。しかしヒップホップは「Education + Entertainment = Edutainment」でもあったんだけど、歴史的に見てそれがシーンの中心だったことが今や特異だった、みたいになってしまうとは。



Supastars - Hood Famous (2007)

「Invisible Man」三つ目のココロ。彼自身を含むオーセンティックなヒップホップカルチャーはメインストリームのそれからは「透明」だということ。一瞬自虐なのかと思ったけど、先生はこの「透明性」はメディアの影響や市場の要望なんかに関係なく創造の自由を得られるものとしている。そんな先生Souls Of MischiefのTajaiとSupastarsというユニットでもアルバム出してるが、Hieroglyphicsはここでいうところの「透明性」がすごい集団だね。


Superstar Quamallah & Taj The Infinite - All Souled Out (2005)

こちらはTaj The Infiniteとのコンビでのアルバム。先生はカヴァーにはDJと表記されてる通りトラック担当。ちなみにTaj The InfiniteはNYのMCで、Tajaiとは別人。マギラワシイ。



John Patton - Along Came John (1963)

Quamallah先生の本名はJon Patton JR。そう、父親はジャズミュージシャンのBig John Patton!。Nasと並ぶ「親父カッコいいラッパー」だ。