Apollo Brown & O.C. - Trophies


優れたラップアルバムの条件?。良いラップに良いビート、そしてその相性だな!。ヒップホップ好きならO.C.とApollo Brownがコラボアルバム出すと聞いた時、そりゃ良い組み合わせだと思ったハズ。そしてこれがその通りの素晴らしい結果で、そんな出来過ぎた話があんのかいなとすら思っちゃったのがこの「Trophies」なのよ。Apollo Brownのトラックは、重さが響くキックに固いスネアなビートに乗る情感溢れる上モノ、というゴールデンエイジな90年代ヒップホップのトラックメイキングにおける黄金率を遵守しているものの、当時のヒップホップトラックに顕著な汚しやラフさ加減みたいなものはあんまりなく、クリーンとさえ言えるような滑らかな質感は00年代のDillaや9th Wonder以降な音を感じさせるもの。良く考えたら90年代ラップの魅力の権化みたいなO.C.のラップはもっとザラザラしたトラック向きっぽそうなもんだが、それを思うと予想以上の似合いっぷりだ。Apolloは基本特別なことはしてないどころか、何曲かは昨年リリースしたインストアルバム「Clouds」の曲をそのまんま使ったものがあったりするあたり、相性ってのは当人達も感じてるんだろうね。その上でCreamの「White Room」を使ったムチャなネタ使いもあったりするし、シンセ音が大胆なものなどもあるが、O.C.の詩情を盛り上げるべくストリングスやシンフォニックな音ネタを使ったトラックを中心にしている傾向が適切。総じて最高のMCの一人たるO.C.に相応しいトラック群で、「別にいいか」って感じでゲスト無し。溢れる貫禄と風格にとことん酔える、条件通りのクラシック!。
Apollo Brown & O.C. - The Formula

ガチガチのNYラッパーなイメージのO.C.さんだけど、この曲はウェッサイのThe D.O.C.へのトリビュートで意外かつ興味深い。あとこのトラックの美しさときたら。



Apollo Brown & O.C. - Nautica

ハリケーンの被害を視覚的に描写し、その脅威を自身の存在になぞらえる。この詩人ぶり。



Apollo Brown & O.C. - Trophies - Anotha One

「吸い終わったらもう一本吸うよ」って気分をここまで豊かに描けるものなのかと。ちなみに詩の中で「コニャックじゃなくてギネス飲る」みたいなこと言ってるんだが、そういやAZも「Doe Or Die」でギネスを挙げてた。ハッパスパスパに合うのかな?。



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O.C. - Starchild (2005)


生まれも育ちもブルックリン。Omar Credle略してO.C.。リアルネーム、ノーギミック。93年のデビューアルバムがいきなりヒップホップクラシック。その1stが「集中」という感じなら、97年の2ndはやや「拡散」と言えるがそれも味で十分傑作。しかしそれ以降はいかにもアングラ・グラグラな「悪か無いけどね...」みたいなアルバムが続いてたか。「それ以降」って要するに00年代のことだけど、その間で気になるアルバムなのが05年の「Starchild」。これ日本で先行リリースされるもサンプリングのクリアランス問題でアメリカではリリースされずブートレグ化。プロデュースはCommonやNasを勝手にリミックスした「Uncommon Nasty」とかやってたスウェーデンのSoul Supremeが中心で、後はあんま聞いたこと無いトラックメイカー達な上、Statik SelektahとDJ Revolutionは基本スクラッチで参加、と製作陣も不思議。O.C.本人も「正式なアルバムじゃない」っつってる困ったアルバムで、そのくせ出来が良いってのが更に困るという。O.C.はこの10年ではこれが一番良いアルバムだったかもしれないってのもなんだか00年代のイメージが出てるような...。でも「Trophies」聴いたらその10年も無駄では無かった気にもさせられますね。
O.C. - 1nce Again

カッコイイでしょ?。


Boog Brown & Apollo Brown - Brown Study (2010)


Apollo Brownは結構不思議な個性のあるトラックメイカーで、前述したことに加えて、美しい音の質感には物凄くこだわりがある一方で音作りのヴァリエーションは少なく寧ろ狭いって言っていいくらい。サンプリングセンスも既に使われているものを大胆に選んできたりすることもあったりするし、スクラッチ音はほとんど使わない。DJってよりプロデューサー的資質が強いのかも。豪華なゲストラッパー達をフィーチャーした2010年のデビューアルバムから、完全インストのソロ、自身のグループであるThe Left、そしてBoog Brownとのコラボに今回の「Trophies」と、2年足らずでフルアルバム5作も出してる。中でもBoog Brownとのアルバムは「Trophies」よりソウルフルな声ネタ使いが多く、「Trophies女性版」みたいな趣もあって聴き比べると楽しい。
Boog Brown & Apollo Brown - My Love (feat. Poodie The Byz)