Masta Ace & MF Doom - MA_Doom: Son Of Yvonne


Masta AceとMF Doomのコラボアルバム!と聞けばヒップホップファンなら大喜びのはずだが、そこまでのファンなら同時に、Doomのトラック「Special Herbs」のやつまた使ってんじゃ?、という疑いを持ってしかるべきだ。結論から言うと...全編そうです!。つまりこのアルバム、Doomが過去に製作し「Special Herbs」シリーズとしてまとめてリリース済みの、要するに既発なトラックの上にAceがラップ乗っけたという、やっぱし!なブツだった。モノによっちゃ10年以上前のトラックとかあるし、何ぼ好きつっても使い回しすぎだろ!と思いつつ聴きましたよ、最初はそりゃね。しかしまずはAceの達人級なラップに圧倒されました。今回は実母に捧げたトリビュートアルバムということで、12才のAceを演じる少年によるイントロに始まり、どんな音楽や環境に影響を受けてきたか、ラッパーを目指した気持ち、仲間たちのこと等等をこれぞ達人なライミングとフロウで語るという、とても興味深いもので。さらにそこで描かれている情景、イメージ、感情はトラックに合わせているというか、トラックからインスパイアされているところがあって、9曲目「Fresh Fest」などは1984年、Run-D.M.C.、Kurtis Blow、Whodini、Fat Boysらによるコンサートツアー「フレッシュ・フェスト」の会場前で「オレがあのステージに立ってやる」と誓った瞬間のことをラップしているこの曲のトラックにはWhoodiniの曲がサンプリングされてるし、母親について語っているタイトルトラックは「Special Herbs」の中でも特にエモーショナルな「Arrow Root」だったり。ってな具合にトラックからその世界観を描き出す様も一流のラッパーの所業だし、逆にAceが自身のことを語るに相応しいと思ってこれらのトラックを選んで、更にラップのイメージを浮かばせたんだとしたら、例え既存のトラックといっても意味があると言えるんじゃないかと。そんな風にラップとトラックの関係についてまたしても色々考えてしまった本作、「Special Herbsもうえぇよ」って言う意見も分かる!、それでも素晴らしいアルバムだと思うぞ!。
Masta Ace - Fresh Fest (feat. Reggie B)


Masta Ace - Crush Hour (feat. Pav Bundy)

これや「Fresh Fest」にはサンプルネタのメロディーに乗せたヴォーカルが入ってて、思わず笑顔になる。



Masta Ace - Think I Am (feat. Big Daddy Kane & MF Doom)

Ace! Kane! Doom!


ふろく: Special Herbs対応表

01. Eucalyptus (Vol. 1 & 2)
02. Agrimony (Vol. 3 & 4)
03. Arrow Root (Vol. 1 & 2)
04. Buckeyes (Vol. 7 & 8)
05. -
06. Datura Storamonium (Vol. 9 & 0)
07. Podina (Vol. 9 & 0)
08. Nettle Leaves (Vol. 1 & 2)
09. Myrrh (Vol. 1 & 2)
10. -
11. Safed Musli (Vol. 7 & 8)
12. White Willow Bark (Vol. 5 & 6)
13.
14. Camphor (Vol. 7 & 8)
15. Orris Root Powder (Vol. 9 & 0)
16. Orris Root Powder (Vol. 9 & 0)


カッコ内は収録アルバム。5曲目と10曲目はスキットでビート無し。13曲目のみ「Special Herbs」シリーズには未収録?(判明したら追記の予定)。


-If you like this title, I also recommend...

Masta Ace - PBS


アルバムの予告っぽく公開されたこれ、サンプルに合わせたセサミストリート・ネタが楽しいけど、(恐らく)そのサンプルのせいでアルバム未収録!。


MF Doom / MF Grimm - Special Herbs & Spcies Volume 1 (2004)


MF Doomの「Special Herbs」シリーズのトラックにMF Grimmがラップを乗っけたこれまた大変素晴らしいアルバムがこちら。Doomのトラックは叙情的だったり、感傷的だったり、美しかったり、ジャジーだったりといったサンプルネタの素材を十分に生かしつつもその処理はえらくラフで、ハードコアなGrimmやラップマスタなAceなんかにはぴったり。ちなみにDoomとGrimmは本作以降仲違いし、後に和解したものの一緒には仕事していない模様で、つまり「Vol.2」は出てない上にこれからも出なさそうってわけだが、「MA_Doom」がその代わりみたいなもんと思ってもいいんじゃなかろうか。ダブってるトラックは2曲だけだし(しかもこれのアウトロが「MA_Doom」イントロに使われてるのが面白い)。まあさすがにDoomそろそろ新しいトラック作ってよ!ってのも本心ですよ。
MF Doom / MF Grimm - 10 Years Later

2004年って、これですらほぼ10年前か!。