Big K.R.I.T. - Live From The Underground


今や正式なアルバムとの色んな区別もなくなってきたミックステープ。なので近年はミックステープの方がアルバムより良い、って逆転現象もまた珍しくなくなってきたのです。なんて、こんな入りでこのアルバムを取り上げるということは...Big K.R.I.T.のオフィシャルなデビューアルバム「Live From The Underground」は「やっぱり」って感じだったかねえ。いや良いアルバムだとは思うよ。メジャーからのリリースだからって安易にポップなプロダクションは全然なくて、それでいて華はあるし。K.R.I.T.は自分でトラックも作る人なんで、アルバム全体の色合いの統一とかも上手く、その辺は表れてる。コンシャスなメッセージはもちろん軽いノリの詩も良いし。音楽性もヒップホップに限らない伝統的な南部の音楽の影響も大事にしてる。影響といえば豪華なゲストもBun B、Luda、Devin The Dude、8 Ball & MJGからB.B. King(!)まで人選も意図が感じられるし。しかしアルバムの出来にしてもK.R.I.T.の本質や魅力にしても、全部これまでのミックステープで既に出てるもので、本作はそれが全体的にスッキリとしてるという印象。作品を残すということに関しての才能は間違いないが、それを最初にガッツリ出しすぎちゃったかな。まあそんな加減の上手くなさも愛嬌っていうことか。
Big K.R.I.T. - I Got This

サウスビートにGファンク風シンセ。車カッコイイ!。


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Big K.R.I.T. - K.R.I.T. Wuz Here (2010)


K.R.I.T.はラップ、トラック共に90年代と00年代のサザン・ヒップホップを一人で総括して自身の音を生み出してるって感じがある。そんな奴が次なる2010年代に出てきたってのはヒップホップにとってすごく良いことなんじゃないかな。そんな実質的に「デビューアルバム」って言える本作は、進むにつれてトラックがエモーショナルでソウルフルな感触になっていく構成が良く出来とる。Curren$y、Wiz Khalifa、Smoke DZA、Devin The Dude...ってゲスト選びもニタニタもんで(スパスパモクモクもん、か)。あと「Live From The Underground」ってサンプリングのクリアランスのせいでリリースが遅れたと聞いてるが、本作はAdeleや「110番街交差点」のテーマとかシレっと大ネタ使ってる。こういうとこもミックステープの方が優位ってのは、もろもろ痛し痒し。
Big K.R.I.T. - Something


Big K.R.I.T. - Returnof4Eva (2011)


詩はさらにコンシャス、トラックはさらにディープになってサザン・ヒップホップのリミットもさらに押し上げたってな評判も納得な2011年のミックステープ。音の感触へのこだわりもありつつ、でもパーティーソングやフライなピンプシットなんかもカッコイイってのが大きなポイント。南部の音楽の影響と、それを消化して自身の音として作り上げてる様は新作よりこっちの方が優れてるような。新作はメジャーからのリリースってのが色々制約になってしまっているとしたら、なんか本末転倒と言うか。まあ「アンダーグラウンド」の魂持ってる人ですからね。
Big K.R.I.T. - Dreamin

こういう曲が感動的なのって、なにげにすごい。


Big K.R.I.T. - 4Eva N Day (2012)


今年、新作のちょっと前に出たこれは「8:04 AM」(1曲目)で目覚めて翌「5:00 AM」(16曲目)眠りにつくまでの長い一日の出来事、心境を描いて構成されたコンセプトアルバム。企画力もさることながら、更にこれまでの作品より全体的にメランコリックでメロウな雰囲気が特色。「Section 80」にも通じるとこあるかも。で、以上3ミックステープはどれも甲乙つけがたく、オリジナルアルバムと考えても全然OK!。そう思えば新作は「4枚目くらいのアルバム」ってイメージが妥当だったりしてな。
Big K.R.I.T. - Boobie Miles