Legendary God

AZ - Legendary / AZ - G.O.D. (Gold, Oil & Diamonds)

NYはブルックリン出身。「ラッパーの中のラッパー」、The Visualiza、Sosa様ことAZ、この夏2枚もアルバムを出してました!。ただ正直両方「悪くないけどすごくいいってほどでもない」という出来。共に40分くらいのコンパクトな作りで、なんか未発表曲集って言われても信じそうな感も。実力に見合った評価を得られるアルバムをまた出してほしいという希望と、今年はベテランヒップホップが熱いという事実、そしてこの人の大ファンであるという意見など考慮して若干厳しい意見を出しておこう。2枚からイイ曲を選んでiPodのプレイリストに入れるとするか。



〜合わせて聴きたい盤〜

AZ - Doe Or Die (1995)

Nasの、いや、ヒップホップシーン最大の傑作「Illmatic」に唯一のゲストとして登場し、「Life's a bitch and then you die. That's why we get high. Cause you never know when you're gonna go...」という屈指の名フックでその名を知らしめたAZ。続くデビュー作において、やたら物騒でハードコアなストーリーを映像的かつ溢れんばかりの詩的なリリック&まろやかな語り口で描き出し、やはりとんでもない奴だったことをさらりと証明する。トラックも当時のゴリゴリのNYヒップホップからするとややメロウで、本人のラップぶりに合わせたであろう意図が狙い通り。ラップ&トラック両方においてメロウネスを持ってハードコアな世界を表現した、そういう意味で「メロコア」と言っていい名盤。ただ悲しいのは、AZの世間的な認知のピークは今のとこここまでってこと(泣!)。


The Firm - The Album (1997)

こ、これは!。ヒップホップシーン最大の「失敗作」!。Nas、AZ、Foxy Brown、Natureからなるスーパーグループで音楽製作はDr. DreとTrackmastersという布陣なのに、批評的にはこれでもかってくらいケチョンケチョンに言われたブツ!。そればかりか参加したメンバーのその後のキャリアを奪ってしまったかのような呪われてんじゃないかって盤で、AZは実力と仕事振りに反比例するように注目度がどんどん縮小、Foxyはスキャンダルでのみしか騒がれないような存在に。Natureに至ってはろくに活動してんのか?という有様で、Trackmastersも勢いがフェイドアウトNasとDreは持ち直したものの、あれほどの存在の2人に暗黒の時代をもたらしたと考えれば恐ろしすぎる。まあこの頃はヒップホップ東西抗争が盛んな折、当時ハードコアヒップホップの象徴として崇められていたNasが娯楽性を求めたアルバムをDreと作ったことへの風当たりもあったかも。で、その後の人間関係まで影響したか、参加面子は散り散りになっちゃった。ただこのアルバム、聴いてて結構楽しい出来で意外と好き。やはりNasとAZ個々の実力はスゴイ上に、コンビネーションにはケミストリーがある。プレ「2001」といった感じのDre先生のトラック結構いいし、En VogueのDawn Robinsonに「Square Biz」を歌わせた「Firm Biz」も単純に楽しい(あ、Dawn Robinsonもこの後パッとしないな・・・)。でもアルバムとしては全米ナショナルチャート堂々1位でプラチナ行ってるって、知ってました?。十分なチャートアクションだけど、その印象あんまり無いですね。「Firm Fiasco」って曲あるのがシャレになってない。


AZ - Decade 1994-2004 (2004)

その後AZは2004年までに3枚のアルバムを発表。どれも悪いアルバムではないものの、本人の注目度はどんどん下がっていき、典型的な「不遇のラッパー」みたいに。ここまでの歩みはリミックスやゲスト参加ものも含むこのベスト盤で振り返れるけど、改めて聴くとメロウ&ソウル度が増していく2nd以降もまたいい感じではないですか。ただこのアルバム、曲によってはエディットしてあるんで、よくあるベスト盤っぽいミックステープみたいに思った方がよろしい。あとAZとNasの共演て2002年の「Aziatic」が最後か?。The Firmは無理でもこの2人の共演はまた聴きたいもの。

RZAがGZAの1stの如きキテレツドープなトラックに仕立て上げた「Doe Or Die (Remix)」Feat. Raekwon!。シェフもあんなにカッコいいアルバム出したんでAZもそのうちスゴいアルバムを作るハズ!。・・・ただそれ以前にRZAもちょっとガンバッテ!。


AZ - A.W.O.L. (2005) / AZ - The Format (2006)

2005年以降は今回の2枚の新作を含め5枚のアルバムを出してるAZ。実は05年、06年と続くこの2作は1stに匹敵する傑作だったりする。どっちもPrimo先生がトラック提供してるからだろ!、とか言われそうだが、寧ろそれ以外のトラックもまったく持ってタイトで力強く、かつメロウネスがあってイイのだ ただ、このリリース時期がNYヒップホップ、ベテランヒップホップにとっていい時期ではなかったのは、いつも述べてる通り。この2枚が今年出てれば印象違ってたか。しかし「A.W.O.L.」はRae & Ghost、Bounty KillahにCL Smooth、「The Format」はM.O.P.にLittle Brother、と、ゲスト陣もイイけど、その辺り「G.O.D.」なんか特にパッとしない。「Legendary」は The LOXからSheek Louchてのは渋いけど。あと「A.W.O.L.」にはボーナスディスク付きヴァージョン「1.5」が有り。


Jay-Z - D.O.A. (Death Of Autotune) Remix feat. AZ (2009)


近年はフィーチャリング仕事も「もっとあっていいのに」!って感じのSosa様だったが、どエライのがありました!。Jay-Z「D.O.A.」に関しちゃ何もかも鋭すぎるぜ。「The Blueprint 3」全体的にはまあまあだったけどね!。


おまけ D'angelo - Lady (Just The Beat Mix feat. AZ)


昨日に引き続きややガッツリ更新してしまったけど、新作でもっと色々書きたかったAZ。大好きなラッパーだけに。しかし、しつこく言ってるベテランラップの風向きはいい方向に吹いてるんで次に期待!。そんな気持ちを込めて、リミックスPrimo先生フィーチャリングAZという、リミックスマニア垂涎の逸品を。すげえ面子のLadyたちに混じってAZが登場するこのビデオの空気、最高だ。しかしDはいいかげん新作出さないと!自分で自分を追い込んでることになってるよ!。



・・・The Firmに関する記述、若干オモシロ優先で誇張があるかも。Natureは去年アルバム出してたそうだし。Natureファンの皆様ともどもにお詫びします。「ネイチャー・ファン」っておもしろいね。環境保護団体か、ジモンかっての。