Wu-Block - Wu-Block


Wu-Blockなんて言葉を聞いたら、Wu-Tang ClanとD-Blockのコラボアルバム?!って期待するのも無理はないとこ。でも先ず結論に触れれば「そうじゃなかった」というのがこのアルバムの正体で、「そりゃないぜ」ってことで以前これを2012年モスト・ズッコケ・アルバムくらいの言い様をしたってワケだ。が、そもそもWu-Tangのメンバーが全員揃うこと自体そうありゃしないこと思や予想できたことではあるかな。…なんて、結局この「Wu-Block」なんなんだと言うと、Ghostface KillahとSheek Louchによるデュオ・ユニットってことらしいんです。この二人を中心にWu-TangからはRZAとU-Godを除く全員(と何故かCappadonna)、D-Blockからは残る二人が参加しているものの、基本的にフィーチャリングのゲストっぽいイメージ。さすがにこれだけの面子が揃ってればラップに関しちゃ楽しく聴ける。しかし本作トラックもなんか弱いものが多いというのも難点で。まあ渋いっちゃ渋いしドープっちゃドープ、程なレベルで、実はそういうの一番困るのよな。トラックメイカーはErick SermonとTermanology以外はパッとしない面子で、そんな面子相応ってのがねえ。1曲目やInspectah Deckが参加した2曲は「Wu-Tangのオリジナルメンバーじゃない連中が作ったアルバムに入ってる、Wu-Tang本体ばりにカッコいい曲」っぽいとこあるが、「本体」の面子がそれやってどうする!。なんで、むしろ軽〜いノリな「Union Square」は意外性ってこと含めてもポジティブに聴けて、これくらいやっても良かったんじゃないかと。トラックメイカーに関してはSheek Louchの過去作を手がけた者が何人かいるんで、Sheek主導のユニットって趣きあるかもしれない。奴さんのソロ作と思えば良いアルバムと断言できるが、それじゃ最初の「Wu-Tang ClanとD-Blockなの?!」ってハナシから遠ざかり過ぎだろう!。
Wu-Block - Different Times Zones (feat. Inspectah Deck)

なんだかんだ言ってもこれなんかカッコイイ。Deckが映えてるね。

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Mestizo - De'nir


これといって特記しておりませんが、2月になってもずっといまだに2012年に出たアルバムを追っております。そしてまだ続いてます。昨年のマイベストリストに無理やりねじ込んだ感もあるHumansuit、その片割れMestizoは昨年ソロアルバムも出しているとあっては、取り上げないわきゃないんでね。タイトルが「デニーロ」でアートワークがこれ、ラップの内容も「皆殺し」だの「ビ○チがどうした」の、いいぞもっとやれって!と言いたくなるほどの清々しい悪々ぶりが最高!。「ヒップホップは暴力的」なんて批判するやつがアホに見えるって。またMestizo、クールだったりワイルドだったり、緩急の付け具合から歌うようなスタイル、はてはふざけた様な(?)口調まで、ラップの技術的にはとても達者な人で、そこに関しては全然ゲテモノっぽくない、実は実力派。アルバムの製作総指揮はMainframeが担当していて、トラックは全体的には音の隙間を生かしたようなタイトなビートの曲が中心。エレクトロニックな音が大胆な曲もあるが、今回はむしろ抑え方のほうが良い感じ。更に外しアイテムみたいにサンプリング中心の曲があるとこもアルバムとしてバランス取れてると思う。マニア向けではあるものの、ストレートにカッコよかったりするのがいいな。
Mestizo - Steel Money (feat. Mainframe)

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Murs & 9th Wonder - The Final Adventure


Whatuptho?、Whatuptho!で今日も引き続きMursとコラボの話。アルバム5作目ですっかりご存知、もうLittle Brotherよりリリース数多いぜ!、と言えば9th Wonderとの自称ダイナミック・デュオね!。しかし物事には全て終わりがある。タイトル通りこのコンビでのアルバムはこれが最後で一旦幕引きということらしく、そいつは残念。しかしそんな最後ということもあってか、Mursも9thも共に気合の入り方、気持ちの入れ具合が相当な作品に仕上がっておるな。Mursのラップは特に恋愛感情について語ったものが印象深く、そこに9thはドがつくほどスウィートだったりソウルフルだったりなネタ回しのトラックを用意するストリクトリーさ加減がさっすが。シリアスな「Funeral For A Killer」や「Tale Of Two Cities」の哀愁など、他の曲についても最後の最後までコンビ仲の良さはドンズバ。ラストの「It's Over」はコレでおしまいって感傷もありつつトラックはユーモラスな雰囲気が良かったり。などなど、やはり今回はその最後、っていう決意から生み出された物が持つ美、みたいなのも感じられる。「有終の美」って言うと簡単すぎるけど。なので「ネクスト・アドベンチャー」とかシレっとまたコンビ組んでアルバム出したとしても全然怒らないよ!。あとアルバムのアートワークは2012年ベストクラス。感動的だ。
Murs & 9th Wonder - Walk Like A Woman

トラックに3曲分の情熱(とコスト?)がかかったナンバー。タイトルはコンビのアルバム1作目に収録の「Walk Like A Man」のもじり。最初と最後をこんな風にリンクさせるのも洒落てる。

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Murs & Fashawn - This Generation


Whatuptho?!去年もヒップホップは面白いコラボ多かったゾ!。ウェストコースト新旧地下カリスマ競演といった趣なMursとFashawnとかね。競演自体は初(?)だろうとも、特に最近あんまりない二人で交互にラップするスタイルとかあったりして、コンビネーションの良さはバッチリ。声質の高(Fash)と低(Murs)のコントラストも鮮やか。まあMursは誰とでもコラボ出来る位の人というのを差し引いても、良さは期待出来てたとこではありますけどね。むしろ意外だったのはトラックの方で、全体的に「オケ」って言った方がいい(音数多いってワケじゃないけど)オカズ多めな作りこんだようなもので、ヴォーカルをフィーチャーした曲も何曲かあったり。実のところ音色、メロディーやリフはなんというかややダサめというか「イナたい」って表現が似合いそうだったりする。ただ、いかにもカチカチなアンダーグラウンド・ヒップホップ、みたいじゃないのが味になってるとこある。そんなトラックを全曲手がけたのはレゲエのプロダクション・デュオでもあるK-Salaam & Beatnickで、それ知って納得。リズムやグルーヴ以外でレゲエっぽいエッセンスがあちこちに垣間見れるし。彼らとのコラボ作でもあるということだろうな。
Murs & Fashawn - Slash Gordan

「交互にラップ」で丸々1曲のナンバー。途中でMursが「お前が先にはじめたけど、今度はオレからな」っつって交代するとことかイイね。スティールパンだけならまだしも、ギターのリフまであるトラックのダサい感じ(褒めてる)もよく分かるかと。

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Blue Sky Black Death & Deniro Farrar - Cliff Of Death EP


今日もBlue Sky Black Deathです!。2012年はNachoとのアルバム2作の他に、EPとアルバムも1作づつ出してるハードワーカーぶり。この「Cliff Of Death」は、GrimesのリミックスにもフィーチャーされてたノースカロライナのラッパーDeniro Farrarとのコラボ作。音色は基本的にNachoとのアルバムの延長線上にありつつ、より幽玄さシューゲイズっぽさを強調した雰囲気。Deniroは「2Pacの生まれ変わり」だの「リーダー・オブ・カルト・ラップ」だの自称する怪しい奴だが、ラップ自体は(本作では)落ち着いた凄みを聴かせていて、これまた靴の先見つめがち(?)なトラックとの組み合わせ不思議な魅力ある。Nachoが参加した曲も1曲あって、二人の違いも比較できるよ。リリースは昨年末、ということは今年のベストに絡めちゃおうか。
Blue Sky Black Death & Deniro Farrar - Just In Case The World Ends

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Blue Sky Black Death & Nacho Picasso - Lord Of The Fly / Exalted


今月頭、と言うとすなわち年明け早々ちょっと体調を崩しちゃって。新しい年のはじまりで期待は青い空のように晴れ渡っているいるというのに、眼前に広がるのは黒い死のみなのか!、なんて思ったわけでもなく、ボーっとして悪寒が走る体でたまたま聴いたBlue Sky Black Deathがとても響いたんで取り上げておきますね。テキサスのNacho Picassoなるラッパーとのコラボアルバムが去年2作も出ていて(しかも両方とも上半期,、というかほぼ一年前)。近年は音のエレクトロニック化が顕著で、303っぽいスカスカなビートのゆったりとしたグルーヴと、もはやテクノって言っていいシンセ音使いっぷりで、幻想的というか幻覚的なムードを持ったサウンドを確立してる連中。クラウドラップだのチルウェイヴだのの影響とかもあんだろうが、映像的でシューゲイザーっぽささえある雰囲気は元々持っていた要素で、それらを残したまま(進化した)オリジナルなスタイルに、どこから連れてきたのかって感じなNachoの、延々と語呂の良い「うわ言」をハッキリ言い続けてるみたいなラップがまたハマってること。体調が戻ってシラフで聴いてもこいつはSickだとすっかりフェイバリットになったのでした(大してうまい事言ってないのは病み上がりだったから、とか大目にみてください)。
Blue Sky Black Death & Nacho Picasso - Phantom Of The Opera

「Lord Of The Fly」より

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Umberto - Night Has A Thousand Screams


1970年代から80年代中盤あたりのシンセ・サウンドによるスコアをフィーチャーしたサウンドトラックに取り憑かれた男Matt Hill。Umbertoなる名前でそんなシンセ・スコアを再現したような音楽をこしらえる彼の最新作は、実際の(特定の)映画をイメージした作品である、だって!。その映画とは「Pieces」、邦題は「ブラッド・ピーセス 悪魔のチェーンソー」という1982年スペイン産のスラッシャームービーってんだから、こいつはメイニアック!。元の映画の方もヘナヘナなシンセ・スコアが使われているのに、Umbertoはぶっといアナログ・シンセのベースに怪しいメロディ、そして「ドチチチ、ドチチチ、ドチチチ」って規則的なリズムボックス風ビート、などなど全編この手のシンセ・サントラのおいしいとこ取りしたようなサウンドで、新たに映画のサントラを自主的に完成させたというとこ。オリジナルのメロディをなぞらえたオープニングから、自身によるメインテーマとそのメロディを色々アレンジしてシーンを彩る様は、音そのものの「いかにも感」やサントラあるある満載でおもろいぞ。 こだわればこだわるほどその様が嬉しいってオレもメイニアック!。
Umberto - End Credits

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